「テロ拠点」と化すマレーシア
ヒト・モノ・カネの中継地に
2011年6月号
五月九日、マレーシア地元紙は、内務省発表として、国内に二年前から在住していたシンガポール国籍の六十歳の男性が、「国内治安維持法違反容疑」で逮捕されたことを報じた。
この逮捕に関する詳細は「治安維持に支障がある」として当局は明らかにしていない。しかし、複数の情報を総合すると、逮捕されたシンガポール人男性はイスラム教徒で、ビジネスを装いながらフィリピン南部で武装闘争を続けるイスラム武装組織に密かに資金援助を行っていた形跡があるという。
さらに、米特殊部隊によって殺害されたウサマ・ビンラディンが率いていた国際テロ組織「アルカーイダ」と関連が深い東南アジアのイスラムテロ組織「ジェマ・イスラミア(JI)」のメンバーとして、シンガポール治安当局が行方を追っていた人物と同一ともみられているのだ。
なぜこのようなテロ関連の重要人物がマレーシアに滞在して、二年間も自由に活動することができたのか。実はその背景には、マレーシア社会が抱える「影」が存在する。かつて東南アジアの優等生とも称されたマレーシアは現在、東南アジアにおけるテロネットワークの一大中継地となってい・・・