危ういパキスタン軍の「核管理」
現実味を増す「核テロ」の可能性
2011年6月号
国際テロ組織アルカーイダの最高指導者ウサマ・ビンラディンの殺害で、米国が勝利の味を?み締めたのもつかの間、関係諸国は「ビンラディンなき世界」に早くも戦々恐々としている。アルカーイダなどの武装組織が「報復」を宣言したからだが、新たな恐怖は自爆攻撃の激化だけではない。パキスタンが保有する核兵器が武装勢力に渡り、「核テロ」が起こりかねないとの懸念が持ち上がっているのだ。
パキスタンは一九九八年五月、インドに対抗して核実験を実施し、イスラム国家として初の核保有国となった。保有核弾頭は百~百十発とされ、米露仏中英、イスラエルに次ぐ。しかし、パキスタン軍がビンラディン以外にも大物テロリストをかくまっている疑惑が強まり、軍から武装組織へと核が流れる危険性が再認識されている。
米国は、表向きには「パキスタンの核管理に心配はない」との立場だ。だが、米中央情報局(CIA)が昨年、パキスタンに職員を大量に送り込み、その数は四百人以上ともいわれるのは、「武装勢力の動向だけでなく、核の実情を把握する目的もあった」(インドの外交アナリスト)という。オバマ米政権は、パキスタン側を完全・・・