オバマが「労組繋ぎ止め」に躍起
ボーイング工場移転巡り共和党と対立
2011年6月号
米航空機製造大手のボーイング社が、次期中型ジェット機「787ドリームライナー」の組み立て工場を、ワシントン州シアトルから、サウスカロライナ州チャールストンに移転することを決定したのは二〇〇九年の十月。
一私企業の工場移転が、ここにきて政治課題に浮上している。労働組合という支持基盤を必死に繋ぎ止めたいオバマ政権と、労組潰しを進めたい共和党の正面衝突の様相を呈してきた。
背景に労組の「民主党離れ」
この問題を語るには、米国における「労働権」を理解しなくてはならない。ルーズベルト時代にニューディール政策の一環として「全米労働関係法(ワーグナー法)」を制定、労働者の団体交渉権や争議権が認められ、労働者全員が組合に加入しなくてはならないクローズド・ショップ制が敷かれた。第二次世界大戦後、タフト・ハートレイ法の成立によりクローズド制を禁止し、オープン・ショップ制に移行する。また、これとともに、南部諸州を中心として、組合加入や組合費を強制されず、労組に入らなくても権利が守られる「労働権」を適用・・・