「中パ接近」は大動乱の始まり
ビンラディン後の南アジア情勢
2011年6月号特別リポート
国際テロ組織アルカーイダの指導者ウサマ・ビンラディン殺害後のアフガニスタンを含む南アジアの勢力均衡地図は大きく変わるかもしれない。スティーヴンソンの怪奇小説さながらジキル博士とハイド氏の両面を備えたパキスタンの反米感情はいま頂点に達し、米国もまた不信感を露わにしている。米国の受け取り方は、「将来もテロがはびこるかどうかを決める、その鍵を握っているのは、恐らくパキスタンである。不幸なことにこの国は、世界で最も危険なテロリストたちの一部拠点になっているうえ、テロとの戦いに完全に参加しているとはまったく言えない」(リチャード・ハース米外交問題評議会会長、読売新聞五月二十二日付)に代表されよう。
根深いパキスタンの対米不信
パキスタンの選択としては中国に救いを求めるほかない。宿敵のインドはこの数年来とみに米国、ロシア両国との関係を深めつつある。が、肝心の米国はビンラディン殺害成功を追い風にしてオバマ大統領がアフガニスタンからの撤退を実行し、来年の大統領選挙を有利に展開する気配が濃厚だ。すでにパキスタ・・・