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経済

戦略なきシャープの「ジリ貧」

完成品メーカーから転落の可能性

2011年6月号

 二〇一〇年度の日本のテレビ販売台数は、平年の二・五倍前後の二千五百六十八万台と空前の水準となった。今年七月でテレビ地上波のアナログ放送が終了するため、デジタルテレビへの買い替え需要が急増したのに加え、景気刺激策のエコポイント制度が購入ブームを巻き起こした。
 その最大の受益者は国内のテレビ市場シェアトップのシャープで、一〇年度の国内販売台数は前年比六一%増の八百八十九万台と急増した。国内で売れたテレビのうち二・八台に一台がシャープ製という圧勝だった。海外市場も含めた全体では一千四百八十二万台と前年比四六%増に達した。激しい価格下落で、パナソニック、ソニーなど上位メーカーですら、テレビ事業の赤字脱出ができないなかで、シャープはテレビで販売台数の規模からみれば少なすぎるものの、二百億円程度の黒字を計上したといわれる。
「ブラウン管テレビは二十世紀に置いていきましょう」と十数年前に液晶テレビへの全面転換を宣言し、三重県亀山市につくった工場から生み出される液晶テレビを「亀山モデル」と名付け、ブランド化したシャープならではの実績といえる。これだけみれば、シャープのテレ・・・