《クローズ・アップ》西澤 俊夫(東京電力次期社長)
危機の淵からの祝福なき船出
2011年6月号
日本の企業社会では、次期社長の呼び声が高い人が社長にならなかった事例は掃いて捨てるほどある。東京電力でも、荒木浩・元社長の後継といわれた山本勝副社長が病に倒れて亡くなり、勝俣恒久会長が社長を降りる際に次の最有力候補といわれた築舘勝利副社長は予想外に常任監査役に退き、清水正孝社長が誕生した。そこには本人の悲運やライバルとの足の引っ張り合い、人間関係の綾などがあるだろう。
そうした意味では、次期社長になる西澤俊夫氏(六十歳)は下馬評通り、順当に社長に指名されたむしろ珍しいケースかもしれない。ひとつ違っていたのは、東電がもはや昔の東電ではなくなっていたことだろう。福島第一原子力発電所事故の収束はまったく先がみえず、賠償責任は到底、民間企業では背負いきれない額にのぼる。国民は厳しい目で東電と原発をみつめている。これだけの逆風のなかで船出する新社長も他にほとんど例がない。
東電では企画畑を長く歩んできた。といっても社内に閉じこもって経営計画を作文する、というタイプではない。永田町や霞が関を飛び回り、政治家、役所との折衝にあたったり、調整作業、人脈開拓など裏方的な仕事が中・・・
そうした意味では、次期社長になる西澤俊夫氏(六十歳)は下馬評通り、順当に社長に指名されたむしろ珍しいケースかもしれない。ひとつ違っていたのは、東電がもはや昔の東電ではなくなっていたことだろう。福島第一原子力発電所事故の収束はまったく先がみえず、賠償責任は到底、民間企業では背負いきれない額にのぼる。国民は厳しい目で東電と原発をみつめている。これだけの逆風のなかで船出する新社長も他にほとんど例がない。
東電では企画畑を長く歩んできた。といっても社内に閉じこもって経営計画を作文する、というタイプではない。永田町や霞が関を飛び回り、政治家、役所との折衝にあたったり、調整作業、人脈開拓など裏方的な仕事が中・・・