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社会・文化

国有地払い下げの盲点

外国政府に優先購入権が与えられる

2011年5月号

 東日本大震災を受けて、財務省は被災地である岩手、宮城、福島の三県に対し、関東以北十四道県にある国有地の無償提供を決めた。仮設住宅の建設用地やがれきの一時保管場所に充てるためだが、これに伴い対象地域以外も含め、四~六月の国有地の一般競争入札を全国規模で中止する。全国での入札中止は初めての措置だという。
「公共利用」の観点から今回は、いち早く中止を決めた財務省だが、近年、財政再建の観点から、国有地売買を促進する方向だ。わが国は領土意識の希薄さの一方で、世界でも類をみないほどの強い私有権が認められた、いびつな土地制度を有している。そのため、本来であれば、入札条件や審査過程などに厳格な規制があってしかるべきだ。
 小誌でも繰り返し指摘してきたように、近年、外資による不明朗な不動産買収の事例が全国で頻発している中、今年二月、財務省も一部規制強化に乗り出した。一般競争入札による国有地の払い下げについては、提示された落札額とともに、土地の用途を審査する方法を採り入れる方針を決めたのだ。
 しかしここには一つの盲点がある。わが国には公共団体や事業者が「公的な利用」・・・