証取委に狙われた野村證券の「罪」
昨年の東電増資で「被害者」量産
2011年5月号
「国債とほとんど同じ金利で借りられる公益事業が、高い配当負担を甘受してまで公募増資する理由は何だろうか。主幹事証券会社が勧めるから、なんて理由でないことを願いたい」
昨年十二月に 専門誌「金融法務事情」で、証券取引等監視委員会の大森泰人事務局次長はこう指摘した。この「公益事業」とは現在渦中にある東京電力のことだ。
注目すべきは最後の一文で登場する「主幹事証券会社」というキーワードである。証券市場を長年見続けてきた大森次長にとって、公募増資決定に至る過程での主幹事証券会社の果たす役割の大きさを指摘しているのだ。
そして、東電に二十九年ぶり、五千五百億円にも上る公募増資を決断させた主幹事社とは野村證券である。野村関係者はこう語る。
「東電への増資提案は一、二年のような短いスパンで決まるものではない。それ以上の時間をかけて東電側とさまざまな角度から検討し、まさに死力を尽くして納得してもらった」
しかし、その死力を尽くした株が現在、かつての超優良銘柄の面影を失い、事実上の「仕手株」と化していることは指摘するまでもないだろう。市場に・・・