南沙問題で強気に出るフィリピン
「対中強硬策」で政権浮揚を画策
2011年5月号
自国民への死刑執行をきっかけとして、フィリピン国内で反中国感情が高まっている。支持率の下落に悩んでいたフィリピン政府は、これを「政権浮揚」に結び付けようと画策している。そして、比中が領有権を争っている南沙諸島海域のキナ臭さが増しているが、その裏では米中の板挟みで矛盾を抱えたアキノ大統領の苦悩がある。
三月三十日、中国福建省と広東省で、フィリピン人男女三人への死刑が執行された。二〇〇八年にヘロインを密輸したとして逮捕された死刑囚たちの「減刑」を求めてきたフィリピン側の努力が水泡に帰した瞬間だ。
この間、フィリピン政府は再三、中国政府に働きかけるとともに、昨年十二月にノルウェーで開かれた劉暁波氏のノーベル平和賞授賞式への政府代表参列を取りやめた。さらに、フィリピン移民局が摘発した台湾人詐欺グループを、台湾の意向を無視する形で、中国に送還するなど、「平身低頭」の姿勢を見せてきた。
中国側が今年二月、直前になって異例の執行延期を決定していただけに、今回の執行を受けたフィリピン側の反発はより大きなものになっている。国内キリスト教団体などを中心として、中・・・