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社会・文化

《日本のサンクチュアリ》「地震予知」という大嘘

科学者の「良心」が問われている

2011年4月号

「地震予知」――。
 当の地震学者の中でも、「予知はできない」というのがコンセンサスになっているにもかかわらず、いまだにこの言葉に縛られた制度や予算が残っている。そしてこの「亡霊」が、この国の防災体制や、今回の原発事故に少なからず影響を与えた。今、この国の地震学者は、科学者としての「良心」が問われている。
 現在の地震予知体制の発端は、一九七六年に当時東京大学地震研究所の一介の助手に過ぎなかった石橋克彦氏(現神戸大学名誉教授)が発表した「東海地方に予想される大地震の再検討―駿河湾大地震について」という手書きのレポートだ。後に地震予知連絡会(予知連)会長となる浅田敏東大教授(故人)という後ろ盾もあり、反響を呼び、その翌年には各種データが気象庁の監視網にまとめられた。また、地震学者による東海地域判定会が、予知連の内部組織として発足した。
 さらに翌七八年に伊豆大島近海地震(マグニチュード(M)7・0、死者二十五人)が発生し、当時の福田赳夫政権に大規模地震対策特別措置法(大震法)制定を決断させた。大震法はプレート境界で起きる「海溝型」東海地震の予知・防災に・・・