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社会・文化

出版界襲う「紙不足」

書籍と雑誌を出せるのか

2011年4月号

 東日本の太平洋側地域を津波が襲った日の翌日、日本製紙グループ本社の芳賀義雄社長は、従業員に対し「非常事態」を宣言した。「石巻工場が三メートルの大津波に直撃され工場全体が海水に浸った」というショッキングな報告をし、同社が「かつてないレベルでの大きな危機に直面している」として全従業員に一致団結を求めたのである。
 紙業界に詳しい調査会社の調査員の一人はこう語る。
「製紙業界の被害は甚大で、生産能力の下落率という面では全産業の中でも大きいほうだろう」
 そして、この影響が直撃するのが出版界だ。震災直後から混乱を起こしている「紙不足」という問題の出口がみえないのだ。出版各社が紙の確保に懸命となる中、自分たちが守ってきた、複雑すぎる流通経路が足を引っ張っている。

二の足を踏む流通業者


 日本の出版・印刷物に使用される洋紙の大部分は業界トップの日本製紙や王子製紙など、「五大メーカー」が生産している。冒頭の日本製紙石巻工場は同社の主力工場だ。世界最速級の抄紙機を擁し国内有数の生・・・