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玄界灘の「海砂疑惑」問題は 普天間や上関原発利権へと発展か
2011年4月号公開
コンクリート原料となる海砂の産地「玄界灘」における佐賀、長崎両県の採取境界線を巡る対立が波紋を広げている。両県の争いは昨年十一月、総務省の自治紛争処理委員による調停に入ったが、「長崎県職員の贈収賄疑惑」が浮上してきたのだ。長崎県の海砂業者が担当者のH課長補佐(当時)を接待し、業者に有利な境界線に変更する文書を作らせたという。
その文書には、長崎県が主張する「漁業取り締まりライン」を佐賀県も了解したと記されているが、佐賀県は「協議で了解はしていない」と主張。H課長補佐が虚偽の文書を作成した可能性が高い。長崎県に疑惑調査チームが設置されたが、結局立件されなかった。「県の上層部からの圧力では」と業界内では囁かれる。
この問題が県同士の小競り合いで終わらないのは、海砂利権が全国的な広がりを持つからだ。玄界灘は現在、日本一の海砂採取地である。「普天間代替施設計画では玄界灘の海砂を運ぶことが確実とされ、すでに九州の業者が地元業者と連携する動きがある。中国電力の上関原発計画でも玄界灘の海砂が使われる予定だった」(業界事情通)。羽田拡張工事や中部国際空港などの埋め立てでも玄界灘の海砂が使用され、「役人や政治家や暴力団に“海砂マネー”が流れた」(同)。海砂利権の闇は深い。境界問題の調停で、この闇がどこまで解明されるか注目だ。
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