ユドヨノ揺るがす 「アフマディア問題」
新たな「宗教対立」が激化
2011年4月号
今年二月上旬、インドネシアの首都ジャカルタの西部、バンテン州パンデグラン県チクシックにある一軒の民家が、約一千人の群衆に取り囲まれていた。国際人権団体「ヒューマン・ライツ・ウォッチ」が入手したビデオには、そのときの様子が、克明に記録されている。
群衆はやがて民家に投石を始めた。そして、「アラーは偉大なり」と叫びながら棒やなた、石を手に民家から逃げ出した人々を追いかけ、暴行を加えた。最終的には、三人の被害者を殺害するシーンばかりか、一部始終を静観する警察官の姿まで映っていた。
この群衆はイスラム教徒で、殺されたのは民家を礼拝所として利用していた「アフマディア」の信者だった。インドネシア国内では二〇一〇年にアフマディア信者が襲撃される事件が約五十件発生している。今年になっても各地で信者や活動拠点が襲われ、多数の死傷者がでる事態が続き、新たな「宗教対立」が深刻化している。そしてこれが、ユドヨノ政権の脆弱な基盤にも揺さぶりをかけている。
煮え切らぬ大統領
実は、アフマディアは・・・