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WORLD

中東騒乱と「アルジャジーラ」

ムバラクを嘆かせた「小さなマッチ箱」

2011年4月号

 カイロの街を歩くと、乳飲み子を肩に抱えあげ、片手を突きだして小銭をせびる物乞いの女性に出会うことが少なくない。失脚したムバラク前大統領の外交スタイルは、例えは悪いが、こういった物乞いの女性のノウハウとどこか似ていた。
 エジプトはアラブ世界と国際社会が抱えている二つの脅威、「イスラエルとの戦争」「イスラム過激主義の伸張」に立ち向かい、その防波堤となっている、との論拠で、前大統領はアラブ産油各国の指導者の不安感を人質にとり、定期的に資金援助を引き出していたのだ。
 そのため繰り返されていたムバラクのアラブ諸国訪問。そのひとコマに、カタール首長自慢の「持ち物」であるアルジャジーラの本社訪問があった。時期ははっきりしないが、一九九六年に開局した同衛星チャンネルが大いに物議を醸し始めた、数年後のことである。
 アルジャジーラの小さな平屋建て社屋は、(新社屋に移った今もそうだが)殺風景な国営テレビ・ラジオ局の敷地内にひっそりと建っていた。短い訪問を終えたムバラクはうなり声を上げた。「この『マッチ箱』がすべての頭痛の種の根源だったというのか!」。
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