《企業研究》東京電力
国家管理移行は不可避
2011年4月号
一民間企業がこれほど大きな不安を社会に与えたのは、近代企業が誕生した十九世紀以降の世界の歴史でも初めてのことだろう。大地震と大津波で壊滅的打撃を受けた福島第一原子力発電所で起きた放射能漏れは東北、首都圏だけでなく、全国に不安を広げ、日本に住む多くの外国人も国外に逃げ出した。大震災の復旧活動は急速に進み始めたが、日本を代表する企業のひとつである東京電力は底の見えない穴の中に落ち込みつつある。
原発の安全性はたった三つの言葉で表現される。「止める」「冷やす」「閉じ込める」だ。災害や機器トラブルが起きた時、原発の運転員はまず制御棒を入れ、炉内で起きている核分裂反応を止める。そして燃料棒が過熱しないように通常の冷却システムの稼働を見守るが、万が一、うまく行かなければ炉内に大量の水を送り込む緊急炉心冷却装置(ECCS)を起動させる。一方で、原子炉は圧力容器、格納容器、建屋の三重構造で炉内の放射能が外に漏れないよう閉じ込める。
単純に聞こえるが、そうした機能は二重、三重のバックアップが用意されており、「多重防護」と呼ばれる。東電はじめ日本の原子力技術者は、この多重防・・・