三万人のための情報誌 選択出版

書店では手に入らない、月刊総合情報誌会員だけが読める月間総合情報誌

経済

生産部門におもねる豊田家

復活する「大艦巨砲主義」

2011年4月号

 三月九日、トヨタ自動車は記者会見を開き、豊田章男社長が登壇して中期経営計画「グローバルビジョン」を発表した。二〇一一年三月期見通しで五千五百億円の連結営業利益を早い段階で一兆円の大台に乗せるなど、当初の観測に反し、中期的な利益や販売台数といった数値目標も公表されたことは一部で話題を呼んだ。章男体制下では初めて「攻め」に転じる積極的な経営計画だが、早くも関係者からは不安の声が上がっている。
 この中期計画について、リーマン・ショック以降の急激な販売減や大規模リコール問題を教訓に作成したと解説するトヨタ幹部は、こう胸を張る。「拡大路線の号令下、上意下達で押し付けられた販売目標が利益率や品質の低下を招いた。ビジョンではこうした点を反省して、販売台数や年次の数値目標を盛り込まなかった。台数至上主義との決別だ」。だが実際は発表当日に章男社長は早速、「一五年はトヨタ単体で九百万台レベルを想定している」と発言する。直後にあわてて「数値でなくビジョンで経営を引っ張る。結果として九百万人に支持されればうれしい」と数値目標であることは否定するも後の祭り。「トヨタにおいて豊田家出身社長の発・・・