不運の名選手たち15
正田絢子(女子レスリング)五輪に出られない「世界女王」
中村計
2011年3月号
涙腺の緩さに一瞬、呆気にとられてしまった。インタビューが始まり、三十分ほど経過したときだった。
「毎日、五食食べていました。三食プラス二食で」
そう言うと、わずかに鼻をすする音がした。
「普通に三食食べて、その間は、お握りを食べていました。練習中は、高校生がお握りをつくってくれたんです。食べやすいよう、ふりかけをかけたりしてくれて。すいません……」
そこで初めて取材ノートに落としていた視線を上げた。すると、案の定、そこには目と鼻をまっ赤に腫らした正田絢子の顔があった。
女子レスリングの世界で四年に一度、繰り返される悲劇がある。
世界チャンピオンが、日本代表になれない―。
世界選手権の階級は、男子同様、全部で七階級ある。しかし五輪になると、女子に限り、その内四階級(四十八キロ、五十五キロ、六十三キロ、七十二キロ)しか実施されない。まだマイナーなため、小規模化を目論む大会側がそれしか認めないのだ。その間の三階級(五十一キロ、五十九キロ、六十七キロ)の選手は、五輪に出たければ階級をず・・・
「毎日、五食食べていました。三食プラス二食で」
そう言うと、わずかに鼻をすする音がした。
「普通に三食食べて、その間は、お握りを食べていました。練習中は、高校生がお握りをつくってくれたんです。食べやすいよう、ふりかけをかけたりしてくれて。すいません……」
そこで初めて取材ノートに落としていた視線を上げた。すると、案の定、そこには目と鼻をまっ赤に腫らした正田絢子の顔があった。
女子レスリングの世界で四年に一度、繰り返される悲劇がある。
世界チャンピオンが、日本代表になれない―。
世界選手権の階級は、男子同様、全部で七階級ある。しかし五輪になると、女子に限り、その内四階級(四十八キロ、五十五キロ、六十三キロ、七十二キロ)しか実施されない。まだマイナーなため、小規模化を目論む大会側がそれしか認めないのだ。その間の三階級(五十一キロ、五十九キロ、六十七キロ)の選手は、五輪に出たければ階級をず・・・