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連載

続・不養生のすすめ3

マユツバ物の「メタボ対策」
柴田 博

2011年3月号

 元来、日本人はふくよかな女性の容姿に美を感じる傾向が強かった。昨年末に亡くなった女優・高峰秀子さんは、昭和初期を代表する「ふっくら美人」だ。池波正太郎の小説「剣客商売」では、色っぽい女を表現するときに、やたらと「みっしりした肉置」という表現を使っている。肉付きこそ、江戸の女の美の勘所、ということだろう。
 そんな美人の基準が一変したのは、昭和三十年代のこと。映画「ローマの休日」の大ヒットが契機ではなかろうか。銀幕に映る華奢でか細いオードリー・ヘップバーンに、男も女も心奪われた。あの時から、日本人はぽっちゃりから「痩せ信奉」に宗旨替えした、と筆者は考える。
 映画の次は実物のイギリス人女優、ツイッギーが来日した。その名のとおり、小枝のような脚を顕わにするミニスカート姿は、痩せ信奉を決定づけた。アメリカなどと比べて、日本は当時も今も、肥満の問題がさほど深刻ではない。にもかかわらず、若い女性を中心に「細いほど美しい」という風潮が広まってしまったことは、不健康であり罪つくりであった。この痩せ信奉こそが、今日のメタボリック・シンドロームの虚構を築く土台となっているのではない・・・