ユーロ「雲散霧消」の危機強まる
現実味増すEU周辺国の「離脱」
2011年3月号
この稿を書いている二月下旬現在、市場では国債入札が順調に行われ、危機感は後退。ユーロの対ドル、対円レートは上昇し、欧州財政危機はもう大丈夫という声すらある。だがとんでもない。今はいわば春の嵐の前の一時的な静けさで、問題はこれからだ。
ごく一例。アイルランドは本号が刊行される頃には総選挙を経て政権交代となっていようが、アイルランド中央銀行は最新の四半期報告書で二〇一一年の国内総生産(GDP)予測を前回予想の二・三%から一%に下方修正。逆に財政削減幅は六十億ユーロへと倍増させた。あまりに厳しい緊縮政策に同国国民も悲鳴を上げ始めた。国債の消化は表面上は滞りないが、調達金利は九%と持続的に返済可能な水準にないことは明らかだ。
そこで、国家の選択として、・昨年十一月に決定した国際通貨基金(IMF)、欧州連合(EU)、欧州金融安定ファシリティ(EFSF)の援助を受けながら時間をかけて返済に努力する、・債務リストラ(デフォルトと同意)つまり三分の一の債務削減で負担を軽減する、の二つの案が浮上。新政権が・を採択する可能性が指摘され始めた。当然、市場は一時的なパニック状態・・・