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中東情勢で存在感を増すトルコ

期待と危険が混じる「オスマン外交」

2011年3月号

 中東全域がチュニジアとエジプトの政変で激動期を迎えた中、穏健派イスラム政党が政権を握るトルコが、キー・プレーヤーとして台頭している。政変を経た国にとっては、「イスラム民主主義のモデル」を提示するだけでなく、米国のオバマ政権の中東外交にとっても、エジプトのムスリム同胞団にパイプを持つ、貴重な同盟国になったからだ。
 ムバラク政権崩壊から一日たった二月十二日夜。トルコの首都アンカラで、レジェップ・エルドアン首相が電話で話し込んでいた。相手はオバマ大統領。一月二十五日にエジプトでデモが始まって以降、これが三度目の電話会談で、オバマ大統領がいかにエルドアン首相を頼っていたかを物語る。トルコ首相府によると、両首脳はエジプト政変後の情勢を話し合い、米側は、情勢沈静化に向けトルコの全面協力を求めたという。
「エルドアン政権は、それまでの米欧向き外交から中東向きに外交の軸を変えた。米欧からは、『オスマン外交』と呼ばれて、疑いの目で見られていたが、中東騒乱で、今や完全に状況が変わった」と、在トルコの政治記者が言う。チュニジア、エジプトの騒乱が起きる前は、エルドアン首相率いる公正発展・・・