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社会・文化

医療を亡ぼす薬害訴訟の「濫発」

得をするのは弁護士のみ

2011年2月号

 肺がん治療薬「イレッサ」の薬害裁判が世間を騒がせている。東京と大阪の両地裁は一月七日、政府と輸入販売元のアストラゼネカ社に対して和解を勧告した。しかし、両者ともこれには応じず、裁判は長期化の可能性も出てきた。
 薬害被害者が、長きにわたる裁判闘争を経なければ救済されないのは、何とも理不尽な話だ。しかし一方で、薬害訴訟は製薬企業や政府にとって大きなリスク要因であり、医薬行政にしこりを残すのも事実である。

「いまや薬害訴訟ビジネスだ」


 現行制度のもと、イレッサのような薬害訴訟で得をするのはいったい誰か。医療訴訟に詳しい関係者は「弁護士だけだ」と指摘し、こう続ける。
「東京で医療問題を専門に扱う弁護士たちの中には相当稼いでいる連中がいる。彼らは、エイズ、C型肝炎、そしてイレッサの薬害訴訟を主導してきた」
 かつて薬害被害者が放置され、誰も救いの手を差し伸べなかったとき、真っ先に被害者を支援したのが彼らだったことは事実だ。多くの国民が、正義の味方と思うのも無理はない。し・・・