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社会・文化

「日販一強時代」へ向かう取次業界

「出版文化」が壊れる危機

2011年2月号

 出版市場が縮小していく中で、この業界の枢要である取次業者間での競争が熾烈になっている。二強の一角である日本出版販売(日販)は攻勢を強め、二位のトーハンのシェアを奪い「一強時代」の到来すら予感させる。また、その日販が昨年から始めた「仕入れ抑制」の影響がここにきて顕在化しており、中小出版社や弱小取次業者をじわじわと苦しめているのだ。そしてこれは、「出版文化」を壊しかねない危険を孕んでいる。
 日販の二〇一一年三月期中間決算は、単体売上高が二千九百五十六億円と、微増(前年比〇・四%)ながら十三期ぶりに増収に転じた。
 出版市場のパイは縮小しているので当然、日販が増収となれば同業他社は減収になる。取次業界は日販とトーハンが市場の七割以上を占めているため、日販増収の煽りをまともに喰うのはトーハンとなる。トーハンの一一年三月期中間決算は、連結売上高が前年から五%も減少し、二千四百八十五億円となった。出版業界に詳しいある関係者はこう語る。
「中小書店が倒産、廃業していく一方、地方中堅書店の奪い合いで、劣勢に立っているというのが一因」

「仕入れ抑制」の余波

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