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経済

「原発バブル」が崩壊へ

米欧は安価な「天然ガス発電」に切り替える

2011年2月号

 二〇一○年秋から一一年初めにかけて世界の原子力関係者に立て続けに衝撃が走った。最初のインパクトは米国で約三十年ぶりの再開となるはずだった原発新設計画が凍結されたこと。二番目は米国エネルギー省エネルギー情報局(EIA)が「長期エネルギー需給見通し」の中で示した、原発ニーズの悲劇的な予測だった。
 引き金を引いたのは、本誌で幾度となく指摘してきた天然ガス価格の劇的な下落だ。火力発電のコスト競争力が一気に高まったことで初期投資の重い原発の優位性が失われてしまった。この急展開に、一九七九年のスリー・マイル島事故後の長い冬の時代に耐えてきた原子炉メーカーだけでなく、「原子力ルネサンス」の掛け声に乗って皮算用をそれぞれ弾いていた大学の研究者やゼネコンなども顔面蒼白となっている。官民挙げた「日の丸原発」の輸出拡大に依然躍起の日本だが、原発バブルの崩壊は急速に進んでいる。

「原発大増設は事実上不要」


 原発計画が幻と消えたのは、米大手電力企業コンステレーション・エナジーがメリーランド州に予定していた・・・