三万人のための情報誌 選択出版

書店では手に入らない、月刊総合情報誌会員だけが読める月間総合情報誌

WORLD

中国「エネルギー逼迫」の絶体絶命

世界経済最大の不安定要因

2011年2月号

 二〇一〇年は中国にとってふたつの経済指標で大きな節目の年となった。ひとつは日本を抜いて国内総生産(GDP)世界第二位に浮上したことであり、二つ目は米国を上回る世界最大のエネルギー消費国になったことだ。
 ふたつの指標を比べれば、GDPの方が一見、重要にみえるかもしれない。だが、世界にとってより実質的な意味を持つのはエネルギー消費の方だ。中国のエネルギー需給が世界のエネルギー情勢に大きな影響を与えるとともに中国自身の経済成長を左右するからだ。
 北京の西方にあたり、中国全体でみれば中央やや北寄りに位置する山西省。中国の王朝の興亡の舞台となった中原の地だが、新中国の建国以来、とりわけ改革開放以後の高度成長の歴史の中では顧みられることのなかった地域といってよい。だが、今その山西省に世界の関心が集まっている。
 すり鉢状に掘り下げられた炭層の底部で大型の油圧ショベルローダーが五十トン積みの巨大な鉱山用ダンプカーに掘り出したばかりの石炭をうず高く積み上げていく。ダンプが黒っぽい砂埃を巻き上げ、次々にすり鉢の斜面につけられた螺旋状の道路を駆け上がってくる。{b・・・