「水完全自給」に舵切るシンガポール
マレーシア依存から脱却めざす
2011年2月号
「二十一世紀は水の世紀」であり、世界各国が水資源を巡って火花を散らしていることは今や常識だ。二〇三〇年には、世界の水需要は現在の供給能力の一・五倍に達するとも予想されており、今後もこの「争い」が過熱することこそあれ、収まることはない。
そんな中で、東南アジアの都市国家シンガポールは水問題に関して大きな決断をした。国土の小さいこの国家にとって、最大のアキレス腱でもあった「水の他国依存」からの脱却へ舵を切ったのだ。そしてこれは、今後の「水問題」をみるうえで、一つの「エポック・メイク」とも呼べる果断である。
水が「アキレス腱」
東京二十三区とほぼ同じ広さの国土に、約五百万人が住むシンガポールには「四つの蛇口がある」といわれる。ほぼ赤道直下の北緯一度に位置するこの国の年間降水量は、他の熱帯気候の地域諸国と同様に、二千四百ミリもある。しかしながら、国土が狭すぎるがゆえに、保水機能を有する山地や森林に乏しく、水源利用が可能な河川もない。結果として、水需要の約半分を隣国マレーシアからの輸入に頼っ・・・