メキシコ麻薬戦争はマフィア「圧勝」
年間死者一万五千人超の「狂乱」
2011年2月号
麻薬戦争の暴力が猖獗を極めるメキシコで、麻薬カルテルと国内有力政治家との結びつきが次々に浮上している。国民は元来、政治家を信じていないが、麻薬カルテルの浸透ぶりには驚愕するばかりだ。二〇一二年の大統領選挙を控え、メキシコの政治・社会は深い闇に沈んでいる。
現与党にも癒着の噂
メキシコの新年はやはり、麻薬戦争で明けた。
一月八日の土曜日の朝、世界的な観光地、アカプルコの観光客と住民は、恐ろしいニュースで目覚めた。ふだんは華やかな商店街のわきで、首を切断された男性の遺体が十五も、ころがされていたのだ。そばには、「チビのグスマン」という書き置きがあった。
その十日後の一月十八日、アメリカ国境に近い百万都市モンテレーで、二十三の遺体が見つかった。五人は手足が切断され、三人はタコスを食べていたところを撃たれた。モンテレーはメキシコで一番豊かな都市で、過去にこれほど残虐な事件はなかった。殺戮を目撃したと見られる老女が、衝撃のあまり心臓麻痺で死亡したほどだった。
アカプ・・・