落日の欧州軍用機産業
生産継続すら困難に
2011年2月号
二〇〇九年十二月十一日、スペイン南部・セビリアの頭上に広がる紺碧の空に、一機の見慣れぬ大型機が舞った。四発のターボプロップに付けられた湾曲しているプロペラと、T字型の垂直尾翼が印象的な「A400M」というこの機は、この日が初飛行だった。
A400Mは、軍用輸送機として五十年以上もライバルの登場を許していない米ロッキード社の傑作機C‐130に対抗して、欧州最大手の軍事企業EADSが子会社のエアバスに受注させたもの(製造はエアバスの子会社のエアバス・ミリタリー)。これは、輸送機を、米国製の一機種にほぼ頼っていては「欧州防衛」の名に値しないという独仏の思惑から生まれた。しかし、初飛行に対する発注国の反応は概して冷ややかだった。
六十機という最大発注国であるはずのドイツに至っては、大衆紙「ハンブルガー・モルゲンポスト」が「これが最後だ! 欠陥飛行機が飛ぶ」との見出しで報じている。なぜなら、同機は性能も開発過程もあきれるほど欠陥だらけなのだ。
戦闘機の「能力」では劣らず
〇三年・・・