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EUの経済成長阻む「多言語主義」

「EU特許」で構造的ジレンマが露呈

2011年2月号

「多様性における統一」をスローガンに掲げる欧州連合(EU)にとって、「多言語主義」はアイデンティティーの根幹を成す大問題だ。
 十九世紀的な〈国民国家〉の枠組みでは、政治的な〈国家〉と経済的な〈市場〉と文化的な〈言語〉が有機的一体を成している。
 これを真っ向から否定したのがEUだ。今や二十七の国家が連合するEU単一市場へと成長し、三十を超える言語を話す五億人の人々を擁するに至った。つまり、国家と言語の多様な共存に寛容な一つの市場を構築することこそが、EUという連合体の真髄なのだ。
 かように多言語主義はEUのアイデンティティーの根幹を成す大問題なのである。だからこそ、たとえ年間十一億ユーロ(約一千二百億円)以上の経費を費やしても、EUは二十三すべての公用語に法令を翻訳して公布し、欧州議会の審議や欧州司法裁判所の弁論には完璧な同時通訳体制を常備し、市民には「エラスムス・プログラム」による留学等を通じて外国語修得を奨励するのである。まるで徹底的な多言語政策を嬉々として繰り広げているかのようである。二〇〇四年には欧州委員会に「多言語大臣」に相当する役職が・・・