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連載

Book Reviewing Globe320 

「義和団」をどう位置づけるか

2011年1月号

The Boxer Rebellion The Dramatic Story of China’s War on Foreigners That Shook the World in the Summer of 1900 Diana Preston Walker & Company 1998 $28.00

 昨年秋の尖閣ショックの際、中国のネット空間では、反日感情が噴出した。中国生まれで豪州に帰化した中国系の企業家は、苦虫を噛み潰したように「連中はまるで義和団だ」と私につぶやいた。六年前、日本の国連安保理常任理事国入りに反対して噴き出した反日デモの際も「義和団のようだ」という批判を米国に帰化した中国系の学者から聞いたことがある。
 百年以上前の「義和団事件」を、なぜ、彼らは想起するのか。
 義和団事件は、清末、山東省から華北一帯にまたがったキリスト教排撃から拡大した大規模な排外運動である。教会、鉄道破壊、北京・在外公館と天津租界の包囲へと進み、「扶清滅洋」を掲げた。西太后はこれを「民の声」として列強に宣戦布告したが、列強は八・・・