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社会・文化

ハーレーダビッドソンの奇跡

バイクを「文化」に高めた顧客戦略

2011年1月号

 大型二輪車で国内最大のシェアを占めるメーカーはどこか? 実は国産車メーカーではない。米国の老舗メーカー、ハーレーダビッドソンだ。ハーレーは高額な七五一?以上の超大型バイクばかりだが、日本法人のハーレーダビッドソンジャパン(HDJ)が設立された一九八九年から二〇〇八年まで、国内新車登録台数は実に十九年連続で増加を記録した。
 ハーレーはかつて地元米国市場で高性能・低価格の日本製二輪車との競争に敗れた、典型的な米国の「負け組」企業だった。そのハーレーがなぜライバルの本拠地である日本の大型二輪車市場でトップシェアを握るまでに成長したのか? そこには、ハーレーを顧客の生活スタイルに溶け込んだ一つの「文化」にまで高めた、ユニークなプロモーション戦略がある。

ファミリーを取り込め


 ハーレーの歴史は古い。一九〇三年に創業し、ピーク時の七〇年代前半には、六五一?以上の大型二輪車で米国市場の約七割のシェアを握っていた。だがその後、ホンダ、ヤマハなど日本勢の米国進出により、経営が悪化。八一年に当時の経・・・