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経済

中国「金保有一万トン」宣言の衝撃

元の「基軸通貨化」への歩み速める

2011年1月号

 二〇一〇年十一月三十日、中国国務院の通貨担当者で国有重点大型企業幹事会の季暁南主席は中国の金保有量一千五十四トンを「三~五年以内に六千トンに、また八~十年以内に一万トンにする」意向を表明した。足元のインフレ対策に四苦八苦するこの国が、一方で示した金の大量購入方針は、金市場はもとより通貨取引市場でも大きな反響を呼んだ。早速、金価格は一オンス一千四百六十ドルという歴史的高値をつけ、その後も大きくは値下がりしていない。
 もちろん、金への投資は現時点では「投機」である。一九七一年八月に米ニクソン大統領がドルと金の兌換停止を宣言し、七六年一月に国際通貨基金(IMF)が金を通貨として認めないという“金廃貨”を決定して以降、金価格は八〇年の一オンス八百七十五ドルをピークに下降の一途。九九年には二百五十二ドルまで落ち込んだ。この下落は主要国の中央銀行の保有金の売却が主因だった。九〇年以降のドル高で「保険」としての金の存在意義が薄れた上、高金利時代に入り利子の付かない金投資が不利になったというのが売却の理由だった。

中央銀行が買いに転じた

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