「地方政治の劣化」が深刻に
致命的な「人材払底」
2011年1月号
九回目を迎えた政府の地域主権戦略会議で、菅直人総理大臣は大阪府の橋下徹知事、埼玉県の上田清司知事らを前に、地方分権の「成果」を強調した。
「一括交付金、当初は三十億円程度しか霞が関が出してこなかったものを、私も尻を叩き、片山善博総務大臣が頑張って、五千五百億円にものぼる準備がいよいよ二〇一一年度予算に向かって進みつつあります。画期的と言ってくれたのが、普段は厳しい両知事だったことに勇気百倍にしています」
一〇年十二月十六日午前、首相官邸での光景だ。しかし、菅の昂ぶる様子を見る橋下や上田の表情は、どことなく、冷ややかだった。
「中央集権」から「地域主権」へ―。二〇〇九年衆院選で民主党がマニフェスト五原則の一つに掲げた地方分権改革は、政官関係を大きく変える内容だけに、省庁側が強く抵抗してきた。菅は一括交付金を成果と強調するが、片山は「一歩前進」と控えめで、政権獲得二年目の今も、改革は遅々として進んでいない。そして、皮肉なことに、地方政治の劣化を知る人々からは、「権限委譲は時期尚早だから、民主党の分権改革が停滞しているのは幸いだ」という声さえ聞こえてく・・・