《政界スキャン》
二年遅れの「中曽根の予言」
2011年1月号
似たようなシーンがあったな、と思う。政界に限ったことではない。しかし、目を凝らすと明らかに違う。歴史は繰り返すように見えて、実際は繰り返しでない。
その一例。一九九三年十二月十六日夜、酒気を帯びた小沢一郎新生党代表幹事が首相官邸に乗り込み、細川護煕首相を相手に、
「武村(正義・官房長官)をいますぐ首にしろっ!」
と声を荒らげた事件、しばらく永田町の話題をさらった。この日は、田中角栄元首相が死去した当日だったから、よけいに話題性を高めたのだが、細川は東京・目白台の田中邸に弔問に出向き、遺体と対面して帰ったあとの騒動である。
「小沢さんの顔は真っ青で、お茶にも一切手をつけず、怒鳴るばかりだった。異常な感じでしたね」
と細川はのちに語った。師匠の死で動転していたのかもしれないが、ただごとでなかった。
小沢の腹の内はだれにもわかった。細川政権は自分が非自民勢力を一本にまとめて作り上げたのに、武村とはソリが合わない。小沢のやり方にことごとに反発する。許せない、ということだったのだろ・・・