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WORLD

危険な中国人民解放軍

党はコントロールできていない

2011年1月号

「銃口から政権は生まれる」(毛沢東)。そして政権を守り、国家の安全と利益を守るのも銃口だ。中国人民解放軍は、共産党政権を支える一方、党の指導下にあり、党の指揮に従わねばならない。ところが近年、軍の発言力が大きくなり、党指導部の政策決定が軍の利益や意思に左右される傾向が強まっている。二〇一〇年の二件のトップニュースも例外ではなかった。
 同年九月に尖閣諸島沖で発生した中国漁船衝突事件。日本が実効支配する海域での中国漁船の「公務執行妨害」摘発に対し、中国政府は敵対的な対抗措置を連発し、日本政府を威嚇したが、その背景には東シナ海から南シナ海にいたる海洋覇権を追求する中国軍の強硬意見があったといわれる。日本との戦略的互恵関係促進の立場から、外交交渉で事を収めるとの中国政府内の穏健派の声はかき消されてしまった。
 もう一つは朝鮮半島危機だ。中国政府は、三月の韓国哨戒艦撃沈事件に続き、十一月には韓国延坪島を砲撃した北朝鮮を擁護、さらに北朝鮮のウラン濃縮開始という深刻な事態も黙認する態度をとり続けた。朝鮮半島の平和と安定を常に喧伝し、北朝鮮の核を放棄させるための六カ国協議を・・・