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WORLD

北京を「牽制」し始めたロシア

日米同盟よりも「危険視」

2011年1月号

 十二月六日、日本海・能登半島沖で行われた日米共同統合演習の空域に、ロシア空軍の哨戒機二機が交差進入して、日米の訓練を妨害した。れっきとした「軍事的挑発行為」だ。その二日前に前原誠司外務大臣が、北方領土を上空から視察したことへの報復だと報道されたが、実は「前兆」とも呼ぶべきものが約一月前に起きていた。
 十一月十二日に二機のツポレフ95型戦略爆撃機が日本に接近し、自衛隊機がスクランブル発進した。ロシア軍機へのスクランブルなど日常茶飯事ではある。しかし、このとき自衛隊関係者はその飛行ルートに度肝を抜かれたという。
 これまでのロシア機接近は通常、北海道周辺や、太平洋、南西諸島方面への単純な往復飛行だった。統合幕僚監部は、外国機の領空接近情報を公開しているが、冷戦時代には、太平洋側に出没する通称「東京急行」という飛行ルートが多かった。最近では、台湾近くまで飛行する「沖縄急行」が加わり、ロシア機の偵察行動は南西地域にまで拡大していた。
 しかし今回は、前代未聞の「日本一周飛行」をしたのだ。まず、朝鮮半島東部を南下し、対馬海峡を通過。沖縄諸島付近を回遊した後、伊豆・・・