米国が描く西太平洋「有事」のシナリオ
対中国で「盾」と規定される日本
2011年1月号
海洋進出を拡大させる中国に対抗するため、米国が新たな作戦構想を練り上げている。空軍と海軍を一体的に運用し、西太平洋地域での軍事展開を強化する「統合エア・シー・バトル(ASB)構想」なるものだ。太平洋戦争以来、この地域で揺るぎない覇権を手にしてきた米軍だが、近年の中国の海軍力増強は目覚ましく、米国の安全保障専門家らは「中国はいずれ米国に取って代わるつもりだ」と警鐘を鳴らす。米国の最大の同盟国である日本は、ASBの原案で、巨竜・中国の前に立ちはだかる「盾」と規定されていた。
日本の地形は「物的障害」
米国のさまざまなロビー団体が事務所を構えるワシントンのKストリート。通称「ロビー街」の一角に立つ高層ビルに、ASBを提唱した国防系のシンクタンク「戦略予算評価センター(CSBA)」はある。理事長のクレピネビッチ氏はマティス米中央軍司令官と旧知の仲といわれ、複数のスタッフがオバマ政権の軍高官に抜擢された有力研究機関だ。
ASBは五年以上前からCSBAが温めてきた構想で、米国防総省が四年ごと・・・