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社会・文化

独り歩きする「司馬文学」

「歪み」があることを承知して読もう

2010年12月号

 NHKのスペシャルドラマ「坂の上の雲」第二部の地上波放送が十二月五日からスタートする。NHKは専用ホームページなどを通じて宣伝に躍起だが、言うまでもなく同ドラマの原作者は「国民的作家」として同名の長編歴史小説を書いた司馬遼太郎である。陸軍騎兵学校を育てた秋山好古とバルチック艦隊を撃破した秋山真之の二兄弟、そして日清戦争で従軍記者を務めた俳人・正岡子規という、松山藩出身の三人の主人公の青春群像を描いた代表作だが、思えば司馬ほどその作品や思想が「独り歩き」している作家も珍しい。
 事実、政財界人らが「司馬さんも指摘されているように」などと口を揃えるように、司馬の死からすでに十四年が経過した今なお、司馬の地位は不動である。否、その地位は逝去から遠ざかれば遠ざかるほど強化されていると言っても過言ではない。

きわだつメディアの「自主規制」


 もっとも、司馬自身が後に「フィクションを禁じて書いた」と明かした『坂の上の雲』を除き、司馬は自らの作品がフィクションであると公言していた。にもかかわらず、・・・