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WORLD

米社会を覆う「戦争の病理」

戦費に表れない負担も増加

2010年12月号

 米国はイラク戦争とアフガニスタン戦争の底なしの泥沼に足を引き込まれ、展望を切り開けないまま、呻吟している。国民の負担は積み重なりこそすれ、軽くなることはない。それは戦費だけの話ではなく、軍が生み出す「病理」がじわじわと米社会を覆っている。
 9・11が発生し、米軍がアフガンに侵攻したのは二〇〇一年十月七日。既に十年目に入った。これはベトナム戦争を超え米建国史上最長の戦争だ。イラクへの侵攻からも八年を迎えており、撤退計画は進んでいるものの、「非戦闘部隊」の名目でいまだに五万人の兵士が現地に残る。十一月二十日にリスボンで開催された北大西洋条約機構(NATO)首脳会議でオバマ大統領とNATO首脳は、一四年までのアフガン政府への権限委譲に合意した。しかしこれについても「ロード・マップというよりは単なる希望に過ぎない」(ポリティコ誌十一月二十日号)という見方が強い。
 

州兵と予備役に依存


 米メディアの報道によれば、イラク戦争とアフガン戦争遂行のために毎週三十億ドル以上が費やされている。アフガンへの・・・