「クマ出没」の背景
最大の要因は「山村の荒廃」
2010年11月号
全国的にクマの出没や人身被害が相次いでいる。繁華街や福祉施設、学校敷地にまでクマが入り込み、二〇〇四年、〇五年に続く「大量出没と捕殺」が起きている。その理由は「山の実りが不作」とよく言われ、実際にドングリを集めて山に持ち込む団体まである。だが、話はそんなに単純ではなく、人間の側にも要因がありそうだ。
本州のツキノワグマに関しては、確かにブナが不作で、今年の大量出没は懸念されていた。だが、北海道のドングリやヤマブドウはむしろ豊作だ。そもそもクマは幅広い食性を持ち、単一の植物に依存してはいない。不作は大出没の引き金の一つでしかない。
鳥獣行政の破綻
今年目立つのは、クマが平野部や海岸の人間の生活圏にまで入り込んでいる点だ。餌探しにとどまらず、行動自体が変化し、人を恐れず大胆になっている。人とクマの距離感が変質しているのだ。
大きな要因は、クマと人間の境界を成していた山村の荒廃だろう。耕作放棄地は格好の隠れ場所となり、廃屋の庭に残るカキやクリが「人里の美味」を教えてしまう。・・・