京都花柳界への招待
千二百年の都が育てた大人の社交場
2010年11月号
月は朧に東山 かすむ夜毎の篝火に 夢もいざよう紅桜 偲ぶ思いを振袖に 祇園恋しやだらりの帯よ……今もお座敷で舞い、唄い継がれる長田幹彦の「祇園小唄」。時代の激しい変化を受け、日本各地の花柳界が存亡の危機にあるなかでも、変わらぬ存在感を放ちながら、今に生きる京都花街。二〇一〇年九月三十日現在、五花街(祇園甲部、祇園東、先斗町、宮川町、上七軒)は、芸妓百九十四人、舞妓八十九人、お茶屋は百四十九軒を擁する。
知られるように、祇園甲部は井上流、先斗町は尾上流などと各花街は舞の流派は異なるが、十一月一日からの十日間、祇園東では秋の京都を彩る「祇園をどり」が毎日二度、祇園会館で開催される。舞台を見て、お座敷をあげるなど、秋の一日を粋に楽しんではいかがか。
お茶屋の一言が「評価」に
祇園町のある東山周辺は、八坂神社、建仁寺、清水寺など社寺を巡礼する人や街道を旅する人、行商の人たちで賑わう景勝の地で、十六世紀中頃にはすでに水茶屋があったという記録がある。この水茶屋こそ・・・