《政界スキャン》
出て来い「日本のサッチャー」
2010年11月号
毎回リーダー論かそれにかかわることを書くことになる。避けがたいことなのだろう。なぜなら、日本人共通の切実な願いは、
「強力なトップ・リーダーがほしい」
ということであり、しかし、どうもいそうにないな、と悲観的な空気が支配的だからだ。どこに講演に行っても、必ずそのことを聞かれる。
「四十代か五十代の有望株はいませんか」
「しいて言えば、だれですか」
などと固有名詞を知りたがる。だが、残念ながら答えられる状況ではない。では、本当にいないのか。いないはずはない、と私は確信している。しかし、いても舞台にあがる環境が整備されていない。
日本型リーダーの条件とは何か、を日ごろからしっかり議論しておくのも環境整備の一つである。戦後三十二人の首相にはいろいろなタイプがいたが、私が好感を抱いた一人は、小渕恵三だった。首相就任まもないころ、小渕は、記者団との軽口のやりとりで、
「おれはボキャ貧だから…&・・・