「総理」を諦めない仙谷由人
悲願の増税を成し遂げるため
2010年11月号
記録的な猛暑が続いていた三カ月前。日韓併合百年に当たり「韓国の人々の意に反して行われた植民地支配」と、歴代より一歩踏み込んだ表現で謝罪した菅直人首相談話を閣議決定した前日、菅内閣の大番頭、官房長官の仙谷由人から自民党総裁・谷垣禎一の携帯に電話が入った。全共闘の活動家だった仙谷と自民党代議士を父に持つ谷垣。二人は東大の同期生で隣り合わせのクラスだった。
文案を説明し感想を求めた仙谷に対して、谷垣は「それは駄目だろう。村山談話のラインを越えている」と指摘。一九六五年の日韓請求権協定で解決済みの戦後補償問題を再燃させかねないとの懸念を伝えた。人権派弁護士だった仙谷好みのヒューマニスティックな内容だが、政府の責任者としては脇が甘い。学生時代と変わらんな。そんな思いを巡らしていた谷垣の耳に意外な言葉が飛び込む。
「日韓併合条約が無効だと書いているわけではない。それより自民党総裁なら今の日本が置かれている状況を考えてくれ。中国がどんどん海軍力を増強しているのに、韓国と組まないでどうする。日本の将来のためにここで一歩踏み込む必要があるんだ」
あの仙谷がパワー・・・