中国「中流層」誕生は幻想
過度の期待は「禁物」
2010年11月号
「被消失的中産(消滅させられた中流層)」。こんな言葉が中国のメディアを賑わせている。中国の中流層といえば、日本企業が今、最も注目し、中国ビジネスの最も重要なターゲットにしようとしている消費者グループだが、実は今、カベにぶつかり、消費のエネルギーを失いつつある。中国が日本のような「総中流社会」に転換し、消費が今後ますます伸びるという期待は裏切られる公算が大きい。中国の中流層は中国共産党が政治的に創り上げ、そして政策の矛盾によって、消滅させられかけている「幻想の階層」にすぎない。
「三億人が中流」は数字の遊び
「月収は手取り一万二千元(約十六万円)あり、ボーナスも年に月収の六カ月分。賃貸マンションには見栄えのいい家具と液晶テレビ、大型冷蔵庫を備え、頻繁に外食や旅行もできていた」と北京に住むIT関係企業の管理職をつとめる三十歳代の独身中国人男性は振り返る。日本のメディアが盛んに取り上げる、まぎれもない中国の中流層といってよいだろう。
だが、今、その男性の生活は暗転した。自宅でカップ麺をすす・・・