本格化する「世界サイバー戦争」
見えざる「大量破壊兵器」の脅威
2010年11月号
サイバー空間で、国家間の戦いが激化している。米国と中国は今年、「サイバー司令部」を公に創設したほか、ロシア、西欧諸国、イスラエルも体制整備を進めている。「サイバー戦争」は、ハッカーやテロ組織への対処から、豊富な財力と人的資源をもった国が、攻撃力、抑止力を拡大する段階に突入した。
原発を破壊する潜在能力
最新の戦争の引き金を引いたのは、あるロシア人技師だった。
技師は二〇〇九年のある時期に、イランのブシェール原子力発電所の建設に携わるため、現地を訪ねた。USBメモリーに仕掛けがあるとも知らずに、コンピューターに差し込んだ瞬間、ウイルスが覚醒し、動き出した。
周囲は変化に気付かなかった。後に「スタクスネット」と名付けられたウイルスは、簡単に発見できる代物ではなかったのだ。ウイルスは、五秒置きにシグナルを送り、特定のソフトウェアを辛抱強く探った。そして、ドイツ「シーメンス」社の工場制御装置を手繰り寄せると、静かに潜入し、制御ソフトを犯していった。
調査したドイツ・・・