Book Reviewing Globe317
「水」をめぐる深刻な葛藤
2010年10月号
Water The Epic Struggle for Wealth,Power, and Civilization StevenSolomon HarperCollins2010$27.99
パキスタンの大洪水ほど、世界のメディアから黙殺された大災害も珍しい。地震や津波に比べて、洪水はニュースになりにくいのか。どれも自然現象なのだが、洪水は当たり前すぎて劇的要素が足りないのかもしれない。
しかし、水は世界の文明と国々の興亡に大きな影響を及ぼしてきた。
英国の十九世紀の産業革命は、大量、かつ安価な淡水の登場を告げた。それによって人口は二倍のスピードで増加し、高度成長もまた可能になったのである。ロンドンは、十九世紀はじめに百万都市となった。古代ローマの人口を上回った。ベニスも栄えたが、ローマのようなメガロポリスにはならなかった。その理由は「淡水希少性」のためだった。
しかし、いま、産業革命後の「大量、かつ安価な淡水」を前提とした地球の水体系は「淡水希少性」という危機的状況に立ち至りつつある。飲み水となる淡水の供給が人口増加と都市・・・
パキスタンの大洪水ほど、世界のメディアから黙殺された大災害も珍しい。地震や津波に比べて、洪水はニュースになりにくいのか。どれも自然現象なのだが、洪水は当たり前すぎて劇的要素が足りないのかもしれない。
しかし、水は世界の文明と国々の興亡に大きな影響を及ぼしてきた。
英国の十九世紀の産業革命は、大量、かつ安価な淡水の登場を告げた。それによって人口は二倍のスピードで増加し、高度成長もまた可能になったのである。ロンドンは、十九世紀はじめに百万都市となった。古代ローマの人口を上回った。ベニスも栄えたが、ローマのようなメガロポリスにはならなかった。その理由は「淡水希少性」のためだった。
しかし、いま、産業革命後の「大量、かつ安価な淡水」を前提とした地球の水体系は「淡水希少性」という危機的状況に立ち至りつつある。飲み水となる淡水の供給が人口増加と都市・・・