東武「根津家三代統治」の秘訣
西武・堤家、東急・五島家の「躓き」を横目に
2010年10月号
九月十一日に地上四百六十一メートルと建造物では過去も含めて日本一の高さとなった「東京スカイツリー」(東京・押上)。周辺開発を含めて一千四百三十億円に上る一大プロジェクトを推進するのが東武鉄道の根津嘉澄社長だ。西武鉄道の堤家、東急電鉄の五島家、小田急電鉄の利光家など関東私鉄のいわゆる創業家が相次いで経営から退く中、根津家は三代にわたって求心力を維持している。根津家の長期統治の秘訣は何なのか。それは一言で述べれば、「鉄道王」と呼ばれた初代の根津嘉一郎社長から一貫する「孤高の経営」の徹底した追求だろう。
誤解されがちだが根津家は、東武の創業家でもなければオーナー一族でもない。嘉澄社長も個人としては大株主であるものの、所有比率は全株式の一%以下に過ぎない。でありながら東武グループのトップとして、スカイツリーの建設に当たっても墨田区の要請を受けた誘致決断からタワー子会社の資金調達まで終始リードした。
一方で嘉澄社長は、そう遠くない将来に「ポスト根津家」に経営を譲る意向を示しており、東武にとってはその軟着陸がスカイツリーの成否を上回る経営課題として浮上してきている。・・・